先日、開催したトライアスロンのワークショップを担当してくださった、
デザイナー 坂本さんのコラムをご紹介します^^
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素材を探しに寄ったお店を見ていたら、駄菓子の棚があって、懐かしんで物色していた。
集中が切れて椅子の背もたれに背中を預けた時、駄菓子の粉末ジュースを買っていたことを思い出し作ることにした。
色の着いた粉末に水を注ぐ。
美味しくなあれ。
しゅわしゅわと音をたてながら、量を増していく。
こんな味だったっけな?
美味くもなきゃ、不味くもなく、でも、鮮やかな色の屈折の向こうに見える何かが、何やらのスパイスになって、飲み干していた。
小さな頃、なんでもないことが特別なことだったよな。
かん…。
貰った洋菓子の空き缶を宝箱にして、見つけては入れていたっけな。
何の変哲もない石ころ、ガラス瓶の欠片、牛乳瓶の蓋とか、ジュース瓶の蓋とか、切手とか、蝉の抜け殻とか、友だちと交換したものとか。どこへいっちゃったのか、今ではもう分からないのだけれど、あの宝箱は現在の自分を形作っている大切なものだっただろうと、思う。
いつも見えて、いつでも触れられるものが、そうでなくなってしまうことが年を経るごとに多くなっていくものだけれど、かんかん…と、今日も僕のどこかで音が鳴る。
姿、形はないのだけれど、僕の中に残っている。
ね、やっぱり快晴。
そろばんトライアスロン日和です。
今日は一足先に教室へ着いたので、お出迎えが出来るな。
力強い足踏みが近づいてくる。
ここ最近、どよよ~ん…としたところへ行くことが多く、かなり力を使っていた僕には、この生なる足踏みは活力を与えてくれる。
おはよう!おはよう!
おはよう!と言いながら、僕にかけてきて、久方ぶりの感動の再開か!?と思いきや、腰の入った正拳突きを腹にお見舞いしてくれるのも、今日の暑さといえば暑中かな。
今回はたった3か月しか経っていないのに、高学年の変わりように驚きました。
いつもと変わらないけれど、落ち着きと大人っぽさがあって、表情に子どもっぽさがなくなっていました。
話してみても、子どもがやくやるステレオタイプ的なやり取りではなく、しっかりとした会話ができるのです。
困難な試練を潜り抜けてきた戦士…!?若しくは今現在闘っているのか…!?
パチパチパチパチパチパチ…
そろばんの弾く音の中、好きな人の話、お父さんの話、お母さんの話、兄弟の話、友だちの話。
ふんふん、と話を聞いていたら、机には採点待ちの答案用紙の山。
それでも止まらぬパチパチの音。
しかし今日は、先生もいるし、おばあちゃんもいる。
三人係。
しかも今日のためにちょっとそろばんを学習してきたから、簡単なものだったら教えることができるのだ。
そう簡単にはこの鉄壁な砦を落とせまい。
答案用紙の答えを見てみるに、間違いだが、これはちょっとしたてこ入れをしてあげれば伸びるぞ、と可能性を感じる。技法を何か上手く例えて説明することができれば…とか考えていると、アイデアを養うために自分も鍛錬しておきたいな、と思うのでした。
あっという間のトライアスロンの時間が終わり、ランチ映画タイム。
今日は名探偵コナンを見ながら昼食。画面にくぎ付けになっているのを見ると、さっきの表情とは打って変わって子どもの表情になっている。そのギャップが可笑しくも微笑ましい。
さて、今日の息抜きタイム「坊の図工の時間」ですが、切り絵に挑戦しました。
作り方では、四角、三角、丸といった図形を用いて、シンプルなショートケーキを作ってみました。
切り貼りすることを基盤とし、書いたり塗ったりして彩ることは良しとする、テーマは自由、で取り組みました。
制限時間の設定は、子ども達にブーイングされるのはいつものこと。
そんなことではへこたれない強い気持ちを僕はここで学びました(笑
何度もやったことがあって、得意な子は素材を見つけて進めていきますが、苦手な子は、そもそも何をやったら良いか分からず、手がつかないことがあります。
自由に、とは意外と難しいもので、筋がないと頭の中にイメージすら湧きにくいものです。
その日のコンディションも影響するものです。
子どもといえど、プライドや意地があります。
ピエロになって、なんでもないやり取りからヒントを導き出してやるのです。
いやいや、、、今話しているところ、、、素材を探して自分の席へ行ってしまいます(笑
黙々と手を動かして物づくりに励み、坊ちゃんほっこり。
最後はどうだ、すげーだろ!と言わんばかりの勢いで、作品を見せてくれます。
坊ちゃん、こっからどうしたら良いと思う??なんて質問があって、
今見るに十分に作品として成立していますが、さらに発展させたいが、どうやれば良いか思い浮かばない、そんな時も、これは??とかこれはどうなっているからこうで??とか導いてやると、電球マークが浮かぶのが見えて、僕はしめしめ、と。
僕も良くあることですが、ピントが合い過ぎると周りが見えなくなって手詰まりすることがあります。特に時間が無いときは。俯瞰視すると見えてなかったものが、足りなかったものが見えることが多々あります。
切れ込みを入れることで見えてくるものがある。子ども達には、この時間で柔軟な発想と怖がらず大胆な挑戦をして楽しんでもらえれば嬉しいです。
今回も予想を大きく上回る素敵な作品が誕生しましたよ。
●最優秀賞
一見クールな彼は、終始黙々と物づくりに励んでいましたのが印象深いです。
その姿とは裏腹に枠を飛び越え、こちらに向かってきそうな勢いのある鳥の立体作品。
クッションのような質感を持たせ、勢いのある構図、ダイナミックな仕上がりがみんな納得の最優秀賞。
物静かな雰囲気の中にある情熱のようなものを垣間見えることができました。
●優秀賞
とても爽やかな雰囲気を持つ彼は、野球球場を作りました。
左右対称に描かれた球場は、その図形の統一感、配置の美しさから何やら紋章や、古代文字やロゴにも見え、グラフィック作品を見ているようでした。
限られた素材が持つ色の中での配色も秀逸でした。
●優秀賞
はじめは、何を作ろうか悩んでいた彼。
Tシャツに描いてあったブラキオサウルスを提案してみたところ、話途中に机に行ってしまいました。
ブラキオサウルスの話の中で自分でヒントを見つけ加筆を重ね、時間をいっぱいに使って仕上がった力作です。
●ボウズドーナツ賞
チェックの折り紙を使って一生懸命小さな手で折って取り組んでいた彼女。
定期的に見ていたのですが、自分の力で仕上げました。
「できあがり さかな」
食卓の魚を作ったようです。
魚好き??と尋ねたところ、首を横に振っていたのがかわいかったです。
土台の形にもこだわりがあり、食卓を彩るパターン使いも巧みで、温かな食卓が目に浮かびほっこりしました。
いつものことながら、どれも優劣がつけにくい作品で、皆に賞をあげたいと思っています。
呼ばれなかった子どもの表情が視界に入るのですが、後ろ髪が引かれる思いにかられます。
トライアスロン終了後、話を聞きにくる子もいて、純粋に悔しさを吐露することも。しかし、選ばれた人を称賛するのですよ。
かん…と。
僕の中で宝物が入った音が鳴る。
今回はこんなことを思いながら、参加させていただきました。
「かんかん。
今日も「かん」と鳴っているよ。
誰かの缶にまた、ひとつ。かん…。
空箱にたくさん詰まっていくのは、
おっきくなっているあかし。
今日も「かん」と。
箱は空を見上げてる。」
それでは、また。
イラスト「缶 たからもの」
今日の作業用BGMN
https://www.youtube.com/watch?v=MVVQynaCOYg
魔法の料理
神戸のポートアイランドを拠点にして活動するデザイン事務所bow’s Design
坂本